金属アレルギーの検査に新たな選択肢となるか(R I使わないリンパ球増殖反応の利用)

論文読んだ

目次

どうも〜金属アレルギーのパッチテストについて調べていたら、

パッチ試験だけやないんやなぁ

と思うような論文を見つけましたので理解のためにも整理を試みました
(ここで、私が書いているのは、読んでこう捉えましたという、あくまで個人的な感想文だと思ってください)

結果としては、

・薬疹の際に使われるDLSTの要領?
・DLSTと違いRIを用いない方法
なのに感度も特異度もいい感じ

という内容と感じました

DLST、つまりLPT(リンパ球の増殖をみる検査)なので

・回収したPBMCと、

・皮疹をきたしている可能性のある金属(DLSTの場合の被疑薬に当たりますかね)との反応

をみています(その金属が原因であればリンパ球が刺激されて、より多く増える反応をみている)

※参考論文は一番下に記載しております

そもそも金属アレルギーとは・一般的な検査方法

直接肌に触れた金属や口の中、手術で体内に留置した金属などがきっかけで、生じた

接触性皮膚炎の1つです

原因を調べる方法に 
・パッチ試験(肌に原因物質を触れさせた際の反応をみる)
・RI使用によるLPT

これらが使われています(僕は接触性皮膚炎に対してLPTはやったことありません)

パッチテストは、第一選択肢となることが多いですが

・金属イオンの浸透が不十分で偽陰性
・刺激性の反応で偽陽性
・からだの中の金属への反応に対しては、まだ検査方法に改善の余地がありそう

なようです(PMID: 29797739

そこで、最近LPTも注目されていると

コバルト、クロム、ニッケルあたりが金属アレルギーではよく聞く
LPTはニッケルで特に有望な検査のようですね

ところが、これまでの方法ですとRI(β線を出すもの使用)が必要なので

・使用できる人、場所が限定
・コストも高い

点が難点でした

このRI使用での課題をクリアすべく試みた内容が、この論文でした

今回RIを使わない方法でのLPTの評価が検査として有用となりうる記載でした

CFSE〜RIを使わないでリンパ球増殖を見る〜

CFSEは生きている細胞を蛍光標識できます

しかも

・長く細胞内に残りやすく評価しやすい
・細胞分裂時に均等に色素も分割されていく=親細胞、子細胞、孫細胞の追跡可能
 (CFSE薄くなるほど分裂していると評価できる)

これらを利用してリンパ球の増殖をフローサイトメトリーで測定可能です

この論文のベース

・過去に金属をターゲット(抗原)とする特異的なT細胞の検出をRI使用のLPTでみており
・病気の仕組みに関わりそうなサイトカインを加えて、診断精度の向上をはかったようです
 (Th1、Th2へ方向性を向けるサイトカインの添加 PMID: 16026586

今回、海外で金属アレルギーの原因として多いニッケルを今回対象とした

過去の報告による方法にさらにupdateをかけるべく、RI用いないCFSEによる評価を行っております

どんな人にどんなことした?

52人に協力いただき、

27人がパッチテストでニッケル陽性、25人がパッチテスト陰性です

その後、パッチテスト陽性・問診や皮膚症状からニッケルアレルギーの群と

それ以外のコントロール群に分けています

パッチテストは、塗布後48時間、72時間、168時間のいずれかの時点で陽性反応なら陽性と判断していました

これらの人にからDLSTの要領で回収したPBMCにニッケルを添加して増殖をみています

・さらに、培養液に①熱不活化ヒト血清添加群、②自己血清添加群、③熱で不活化した自己血清添加群に分けており
・サイトカイン(Th1,2,17)それぞれ添加群と非添加群のリンパ球増殖の反応の違いもみていました

結局

・ニッケル(以下Ni)添加でのCFSEでリンパ球増殖反応を確認
・加える血清やサイトカインは:自己血清+サイトカインなし が最も検査として有用
・熱で不活化していない自己血清になんらかのmeritあるけど詳細はまだ不明
・検査精度向上の難しかった体内金属に対しても有用な可能性

といった点が分かったことと判断しました

結論への道のり① CFSE用いてリンパ球増殖を確認

リンパ球のサイズの細胞で、CD3でゲートした後です
縦軸がCFSEの強度でして、強度の落ちている細胞がCD4陽性細胞で増えている
=分裂が起こっている

このことからNiの刺激で、CD4陽性細胞が分裂促されており、それをCFSEで測定できているようでした(これはサイトカインの有無など培養条件に関わらず、でした)

結論への道のり② 培地に添加するものは自己血清が良さそう

そういえば、血清は細胞培養の栄養?として必要で添加します
よく使うのが、熱不活化血清なのですが、
厳密には元々細胞がつかっていた血液と別の成分が入っている可能性はある(その不明な成分がリンパ球刺激する可能性はある)ので、元々の自分の血液成分である自己血清と反応の差を比較していました

AでもBでも明らかに1本伸びているグラフがありますが、良好な増殖反応を見せていたのが

熱で不活化していない自己血清添加群でした

また、よく言われるのが、

皮膚症状が出てから長い期間経つと反応が弱いのでは無いか

ということでしたが、皮膚症状発症後

半年以内

半年以上経過

の2グループでの比較で、リンパ球増殖の結果に差はなかったようです
(これは、ちょっとくらい弱くなるのかと思いました メモリーT細胞のおかげなのでしょうか)

結論への道のり③ サイトカインは添加なしで良さそう

血清の確認をして、次にサイトカインの確認です

PT:パッチテスト陽性か陰性か

H:問診からNiアレルギーあるか、無いか

の群で、熱不活化血清群と自己血清群にわけ、それぞれサイトカインを入れていきます

6つグラフがありましたが、
結果として何にもいれていないこの(A)がNiアレルギー群のLPTが良好でした

結論への道のり④ RI用いる方法との比較

さて、実際に使用されているRIを用いたLPT(グラフの右)との比較です

ざっくり、グラグの一番右の列が良好なリンパ球増殖を示していると好ましいと思われますが、

これは、RI使用の有無にかかわらず良好な印象です

→つまり、今回の方法で既存のRI用いたLPTに劣らない(何なら偽陽性も少なそう)結果となっております

既存のツールと比較し有用か

この論文の方法は、かなり有用、実用化される方法になるのでは無いかと思います

と言いますか、これが可能であれば既存のDLSTもこのように評価できないものかと思うくらいです
(既にやっているか?)

以前はRIによる評価が必要でしたのでしょうが、測定機器が発達している昨今はフローサイトメトリーによる評価でも実用的なのかもしれません(フローサイトメトリの機器自体は高いけど)

また、今回検査困難な印象であった体内金属に対しても評価が一定の精度で行うことができそうな可能性を示しているのは今後の報告も読ませていただきたと期待でいっぱいです

それにしても

こんなに細かくグループ分けして、研究大変だったろうなあ

と思いました

論文をわかりやすくまとめるのは難しいですが、やってみながら上達したいと思います

今日もここまで読んでくださいましたら、本当にありがとうございます

【参考論文】

Niels P J de Graaf et al, Non-heat inactivated autologous serum increases accuracy of in vitro CFSE lymphocyte proliferation test (LPT) for nickel. Clin Exp Allergy, 2020 Jun;50(6):722-732. PMID: 32215995

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